4. 大きさも寿命も別格?屋久杉のスケール

屋久島で最も有名な観光スポットと聞いて「縄文杉」を思い浮かべる方も多いと思いますが、毎年多くの方が縄文杉を見に訪れています。 そんな縄文杉ですが、実は「縄文杉」という名前は種を示すものではなく、植物の個体に付された名前(固有名詞)だということをご存知でしょうか?つまり縄文杉という巨木はこの世に一つしか存在せず、それ以外はいくら大きくても、いくら古くてもすべて「屋久杉」なのです。今回は、縄文杉に代表される屋久島の顔「屋久杉」にフォーカスを当ててみたいと思います。

屋久島の杉がこれほど長生きする理由

屋久杉は、屋久島の標高500mを超える山地に自生している杉の総称です。ヒノキ科スギ亜科スギ属の常緑針葉樹である杉は全国各地で広く見ることができますが、この屋久島は杉が自生しているエリアの南端に位置しています。 杉の平均寿命は一般的に「長くても500年程度」といわれています。500年前と言えば、日本では戦国時代の真っただなかであり、ヨーロッパでは宗教改革があった時代ですね。
しかしその一方で、屋久島には樹齢2000年(2000年前は弥生時代!)をゆうに超える屋久杉がいくつもあります。 この桁外れに長い寿命の理由は、屋久島特有の環境にあるとされています。栄養の少ない花崗岩の痩せた土地に生えていること、多湿のために樹脂が多く腐りにくいこと、新鮮な水に恵まれていることなどの条件が重なり、通常よりも成長が遅いためにこれほど長く生きていけるようです。

屋久杉の数百年後を想像してみましょう

宮之浦岳縄文杉縦走コースやヤクスギランドなどを歩いていると、比較的細くまっすぐ育っている杉と太くてゴツゴツとしている杉があることに気づくと思います。前者は若い屋久杉、後者は年季の入った屋久杉で、現地では狭義において樹齢1000年に満たない屋久杉を「小杉」、樹齢1000年を超える屋久杉を「屋久杉」と呼ぶそうです。 江戸時代には真っすぐな屋久杉が建材として多く伐採され、光が差し込むようになった伐採跡には新しい屋久杉が誕生しました。こうして育ったのが樹齢数百年の「小杉」です。この「小杉」の中から、厳しい競争を経て「屋久杉」へと成長するのはほんの一握りです。現在「小杉」と呼ばれている木々の中から、巨木になり本物の「屋久杉」と呼ばれるようになる杉が出てくると思うと、とても感慨深いですね。屋久島ツアーに参加された際には、皆さんもそういった目線で屋久杉たちを見てみてはいかがでしょうか?